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2011年9月 6日 (火)

約束の方舟 上/下

ハヤカワ文庫JA 瀬尾つかさ著

延べひと月ほどかけて読了。我ながら遅かったな。あまり一気読みしたくなる作品でなかったという面はあったかも。2冊で3部作という中途半端な構成も何というか。同時発売だからそれほど不具合はないけど、3冊でもよかったんじゃ。多分本人そのつもりで書いてそう。

第一部。宇宙船で移民計画な物語。謎の侵略者ベガーとの戦争から15年後、その背景説明。シンゴ、テルを中心とした親ベガー的戦後世代と、戦争を経験した反ベガー的旧世代の対立の構図に、船の疲弊を絡めて社会の様相を描写。
一部の柱はシンクの天才テルがみんなの中心に存在している一点。そのテルを支えるシンゴ。子供はテルにカリスマを見出すし、大人も仕方なくベガーを受け入れてるという状況。大人が本当に大人だなあ。影薄いけど。ベガーがいないと成り立たない中で、ベガーとの共同作業でポイント貯めて子供も自立して生活できるこの世界観はちょっといい感じです。子供の精神的成長も早熟でみんな自立してるなー。作中、狂気みたいな表現がところどころにあるけど、狂気というより芯の強さを突き抜けた頑固さと覚悟みたいな解釈のがしっくりくるかも。とにかくこの世界、大人も子供も大人です。達観しすぎ。
ところでベガーと同一化することをダイブではなくシンクと呼ぶのは、人間よりもベガーに比重がありそうなイメージで、好みな表現です。

第二部。何で日本人的名前の登場人物しかいないのかわからなかったけど、さくらの登場でようやく納得。空気読むAIって。そりゃ日本だ。移住先の惑星名からしても移民プロジェクトは日本発だろうな。といっても三部でこれもひっくり返るんだけど。どうでもいいけど女性型はギュノイドあるいはガイノイドいってほしいです、SF作品なら。もしくは外見だけ女性で中身は男かもしれない。きっとそうに違いない。すごいAIみたいだし。
シンゴやスイレンはすでに3年前に完成されてた感があるので、ダイスケ、ケンの成長が目を引く二部。あるいはもともと彼らも成長してたけど見せ場がなかっただけか。キリナの登場はテルとの対比的に。このキリナ12歳は3年前のシンゴ12歳に負けず劣らず完成されてる感。現代日本の15歳と一緒に考えたらこの作品は読めないですね。犬猫的成長速度。社会の熟成やビジュアル的な面も含めてそういう世界なんでしょう。
親ベガー、反ベガーが組織立ってきてて、3年前に比べて空気ピリピリ。差別問題だから当然だけど、思想の反作用って怖いね。アパルトヘイトとかちょっと考えます。
目的地タカマガハラⅡはまだちょっと遠い存在。

第三部。目的地直前。一部後といい二部後といい、材料はあるのであとは想像にお任せします的後日譚でくくってあるのは、そういう演出なんだろうけど、まとめて出版されてるがゆえにあまり余韻を感じられないのはどう判断したものか。シンゴもさぞ苦労したろう。
ますます重要度の増すシンゴのポジション。バランス感覚難しいなあ。でも自覚を嫌う主人公。スイレンから無茶要求されて面倒臭い気分だろうな。こういうところで子供らしさが残ってるのはちょっと可愛いけど。
とまあ、ここまではよかったのだけど、収束に向かうにあたってかなりやっつけ感のある伏線回収。地道な努力で政治的に話を進めてきたのに、結局は動いたもん勝ちなのかと。キリナも薄いし。後継ヒロインよりも裏ヒロインが目立つと下巻の表紙は誰だかわからなくなりますって。

要するに、子供視点の謎の生命体絡めた政治・社会面にアプローチするSFでした。運営とか差別問題とか心構えとかそういう。アンドロイドもベガーも個として認めるか。できればシンゴ、スイレンだけでなくウィルトトやミクメック、あるいはアンドロイドに感情移入するつもりで読むと楽しめるんじゃないかと。ただ、船長は21年前にまずマザーベガーより先にさくらを起こすべきでしたね。どんだけ箱入りだ。それ以前に出航時に船長とさくらで冗長構成にしとくべきだったというべきか。ひどいな、日本人。まさかそれがテーマか。

エピローグは普通に読めば共生がこなれた世界。シンゴとキリナの七親等か。若い乳母も傍系とかかな。あるいはコトリやテルのようになった新世界かもしれない。まあ想像するのは楽しかろうということで。

テルは願った。

キリナは誓った。

2分冊で出版したのは結果正しかったのかなあ。帯のキャッチはセンスあると思うけど、やっぱり3分冊で中巻キリナ下巻スイレンのが綺麗ぽい。スイレンは○った。何を入れたらちょうどいいかな。笑?

ラノベ作家としてのイメージも残しつつ、ハヤカワJAらしい作品でした。あまり売れてなさそうなのはちょっともったいないかなあ。ハヤカワじゃ仕方ないか。でもこの方向性でがんばってくれるならこの作家さんは応援したいところです。2、3作品も書けばこなれて本格SFとかいい感じになりそう。
ていうか、ブログ更新マメすぎやしませんか、瀬尾つかさ氏。とりあえずぷよぷよ好きなことは理解しましたけども。

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